鉄鋳物(鋳鉄)

鉄鋳物

◇冷めにくい
鉄という金属は、いったんため込んだ熱を簡単には逃がさない性質をもっています。アルミなどに比べてずっと保温性がよいのです。すき焼き鍋や煮込み鍋などの熱をいかすものには最適です。
◇温度ムラになりにくい
保温性のよさは揚げ物などのとき、油に温度差ができにくいということでもあります。温度にムラがあってはおいしく揚がりません。鉄鋳物の鍋は熱が均一に伝わるので、全体にからっとおいしく仕上がります。
◇焦げつきにくい
鉄器表面は細かい凹凸でおおわれています。これは鋳型の砂目が写しとられたもので、調理のときここに油がしみこみ、さらに加熱された空気が入り込むことで焦げつきを防ぐはたらきをします。つまり鉄器は使い込むほどに、油のなじみがよくなっていくのです。そのためには洗剤はなるべく使わず、温水とささらで汚れを落とすのが、鉄器をよい状態で長持ちさせるコツです。
◇安心感の重量
鋳物の鍋は、その構造から他の材質のものに比べて厚手になります。そのためいささか重く感じられることと思います。でも熱々のお料理が煮えているのです。万が一ひっくりかえりでもしたらそれこそ一大事。鉄器の鍋なら、重さが適度な安定感となってしっかりとお料理を支えます。


鉄器で貧血予防ができるの?

◇女性は男性にくらべ、より多くの鉄分が必要と言われています。とくに妊娠中は胎児の成長にともない、血液の量が増えるため多くの鉄分が必要です。理想的な出産のために、日ごろから鉄分の摂取を心がけましょう。また成長期の子供でも、血液を作るための鉄分が必要です。
◇人間の血の赤いのは、赤血球に鉄分が含まれているからです。赤血球は肺で酸素を受取り、血管を通って体内の細胞のすみずみにまで運んでいます。赤血球が正しく働くためには、鉄分が必要です。もし不足すると、赤血球がうまく働かず、細胞の活動がおさえられてしまいます。これが貧血のさまざまな症状となってあらわれます。
◇鉄器は調理の時、表面から鉄分が溶け出しています。もちろん鉄の固まりがガリガリと削り落ちているのではなく、イオンのかたちで少しづつ食品に溶け込んでいるのです。このイオン状態の鉄分は、人体に対して大変吸収率のよいもので、日頃から鉄器で調理することは、貧血予防に効果的であるという研究がなされています。現に鉄鍋や鉄包丁を今より用いていたころは、貧血になる人がずっと少なかったとも言われています。


鉄器の扱い方法

◇鉄鋳物は炭素分を多く含むため、比較的割れやすい金属です。高いところから落とす、硬いものにぶつけるなどの、急激な衝撃をあたえないようにしてください。
◇鉄鋳物は比較的厚手になります。そのため重く、硬い材質ということもあって、取扱いや持ち運びには充分注意が必要です。特に鍋類などは具を入れることにより、さらに重量が増します。ご注意ください。
◇鉄瓶や鍋類では加熱時、取っ手や注ぎ口、蓋などはかなり熱くなります。必ず鍋つかみ等を用いてください。 
◇鉄瓶や鍋類には、加熱時に油ハネや吹きこぼれが起きやすい形状のものがあります。注意してください。特に大半の鉄瓶には、蓋に蒸気を逃がす穴がありませんので、沸騰すると注ぎ口から熱湯が吹き出す恐れがあります。火にかけるときは蓋をすこしずらして蒸気抜きをしながらにしてください。注ぐ際にも口から熱湯が吹き出すことがあります。
◇ほとんどの鉄器表面には、塗装がしてありますが、湿気にさらされていると、サビがでやすくなります。調理後、温水で洗った後はよく水気を切り、さらに空だきをしておいてください。万が一空だきをしすぎてしまったときでも、水をさすなど急冷は絶対に止めてください。強く蒸気が吹き上ったり、割れてしまう恐れがあります。


鉄鍋の正しい手入れ方法

新品の鉄鍋にしてあげること
◇油を使う料理の場合は、ショウガやネギの野菜くずを強火で炒めます。煮物に使う場合は、野菜くずを水で煮ます。鉄鍋特有の匂いが消え、油や汁とのなじみがよくなります。
使い終わったら
◇なるべく温水を使って、ササラかたわしで洗います。洗剤なしでも汚れは落とせますが、汚れの程度に応じては、使っていただいてもかまいません。
◇軽く空だきをして水気を取り去ってください。


天ぷら鍋、すきやき鍋、しゃぶしゃぶ鍋の特長

天ぷらや鍋料理に必要な熱の均一化のため特に厚手に出来てますので均等に加熱し冷めにくく、急激に温度が低下しませんので調理に最高の条件を具えています組織が緻密で純良な素材ですから耐久性に優れ錆びが浮いても表面のみで、金属たわし等で磨けば錆びは落ちます。
取扱いの注意点
◇取っ手は熱くなります。ミトン等の鍋つかみを使用してください。
◇しゃぶしゃぶ鍋の煙突は使用中熱くなります。手や肌が触れないように注意してください。
◇鉄は錆びやすいのでご使用の後すぐお湯で洗いサッと空だきして水気をとり、新しいサラダオイルを薄く塗り乾いた布でふきあげてください
◇料理を入れたまま保存しないでください。


山形鋳物の特長

デザインもさることながら、品質がよく鋳肌がきれいな点にあります。これは伝統技術として生まれ育った歴史的背景があるからです。山形鋳物の歴史はかなり古く、文献によると約650年前の昔からで、発祥はそれ以前と考えられています。鋳物に必要な適度の粒度および耐火度のある砂と粘土が豊富にあったため発達してきたもので、技術的に薄肉のものを作る努力が払われてきました。これは材料の節約ばかりでなく、鋳肌のきれいな良質なものを作ろうとした意欲の表れであり、その伝統技術が継承されてきています。永年の技術と経験から生まれた薄肉の鋳物は"鉄鋳物イコール重たい"というイメージから脱却を図ったもので、扱い易く調理時間も短くて済みます。アルミ鍋と違い適当な厚みは、平均加熱、保温性に優れた鉄の特長を維持しています。


和銑(鋳物用砂鉄銑)

日本古来の製鉄法により作られたものです。明治以降、高炉により鉄鉱石を使用した洋式製鉄法の技術が導入されるまでは、鉄は古来の砂鉄による和式製鉄法で作られました。原料は風化した花崗岩中に含まれる砂鉄を人為的な流れにより選鉱したものや、自然淘汰を受けて川底や海辺に集まった砂鉄を木炭を燃料とする"たたら吹き"という直接製鉄法で鉄を得ていました。その発祥地は出雲地方と推定されその後各地に伝えられ、東北地方もその豊富な砂鉄と木炭による製鉄が行われてきました。しかし洋式製鉄には価格の面で敵わず古式製鉄法は衰微しました。戦時中軍の需要のため復活いたしましたが、現在では一部に残るのみで戦後東北地方でも砂鉄による製鉄が行われてきましたが生産は衰退いたしました。したがってその製品は希少価値をもつものとなりました。砂鉄はすべて白銑で不純物が少なく組織が緻密で固く破断面は銀白色を呈しております。砂鉄鍋は組織が緻密ですから、熱容量が大きく熱伝導が適度なので、一旦熱くなると冷めにくく料理用鍋としては理想的条件をそなえています。特に厚手に作ってありますのでその特質が生かされ、熱源に無駄がなく耐久性は特にすぐれています。鉄は錆びやすいのが最大の欠点ですが、砂鉄は錆びが浮いても組織の中まで浸透することがなく、錆びを落としても耐久性に変化はありません。


南部鉄器の歴史

◇1000年前、平泉を拠点に栄えた奥州藤原文化。鉄づくりは当時のハイテク産業でした。みちのくには原料となる砂鉄や、燃料の木炭などが豊富で鉄器づくりに適していました。
◇現在の岩手県は、江戸時代には南部氏が治めていた南部藩と、仙台の伊達藩とにわかれていました。両藩とも鉄器づくりを熱心に保護、奨励し育成に努め、全国的にその品質のよさが知られようになりました。そうして、南部の盛岡、伊達の水沢で生産される鉄器を、あわせて南部鉄器と呼ぶようになりました。
◇水沢の鉄器は、鍋や釜、農耕具などからスタートしました。南部藩の城下町盛岡市の鉄器が、藩御用達の茶器を中心に発展したのと対称的です。


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